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シリーズ 【Vol.5】
【Vol.5】
習慣が持つ力に気づこう
習慣には、意識した経験で作られたものと、無意識の経験によって作られたものがあります。いずれも同じ行為を繰り返しているうちに、それが身体に染みついたものとなり、自分の意志を離れて、勝手に動き始める「習慣」となったのです。
そしてその習慣は、人間が持つ不思議な智慧のひとつでもあります。習慣化するという不思議な力がないと、どうなるか。車の例で説明してみましょう。
車の免許を取って、初めて運転した時から何年も経つのに、左に曲がるには......、信号表示の意味は......、などといちいち考えて、そのつど判断しないと運転できないのでは、怖くて道路を走れません。何度も繰り返して経験するうちに、それが習慣化され、考えなくても頭が無意識に判断して、身体が勝手に動くようになるから、誰もが安心して運転ができるのです。
同じ事を何度も行うのに、そのつど最初から考え直し、決断し、方法を思い出すという作業をしないと行動できないというのでは、時間的にもエネルギー的にも、人間は大変な苦労をすることになります。生活のあらゆる場面でこのような事が起きると、私たち人間は暮らしていくことさえ困難となることでしょう。「習慣」という智慧が備わっていなかったら、もしかすると人類の進化もなかったかもしれません。
習慣には、同じことを繰り返していくと、最初に要した努力よりも少ない努力で、さらに進歩したことができるようになるという力があります。この力が備わっているからこそ、私たち人間は、これまで進化し続けることができたのです。
ところが、現実には、自分にマイナスの影響を与える習慣も身に付いてしまいます。それは、気づかずに習慣になったもの、あるいは意識して習慣にしたものを含めて、これまでの生き方の何かがそうさせたのです。せっかく授かった智慧の活かし方を知らないために、誤った習慣を育ててしまった、という方が分かりやすいかもしれません。
習慣というものが、どれだけ自分に影響を与えてきたかということは、子供の頃、あるいは学生の頃と、いまの自分とを比較してみるとよく分かるかもしれません。その当時の自分の性格、考え方や感じ方、行動の仕方などを思い出してみてください。いまの私たちよりも、はるかに自分に対して正直で、ストレートに自分を表していたのではないでしょうか。
それが、大人になる過程で、いろいろな経験を重ね、いろいろな習慣を身につけていくうちに、気持ちも考え方もだんだん複雑になり、良くも悪くも、いまの私たちの〝個性〟が作られてきたのです。「いつの頃から、こんな自分になったのだろう」と観いながら、振り返ってみてください。思い当たる節があるはずです。

子供の頃の自分はどうだった

この地球上のすべての生命体の中で、成長するにしたがって、マイナスの習慣を抱え、それによっておかしな方向に変わっていくのは、いくら探してみたところで、おそらくは人間だけだと言えないでしょうか。
植物を例にとって話をしてみましょう。
たとえば、花の生命は、地中に埋もれている種子のときから、まっすぐ天を目指して育っていきます。地表を破って現れた若芽は、風が吹けばそより、雨が降ればしおれながらも、そうすることが当然のように、ただひたすら天に向かって伸びようとします。何らかの障害物があれば、逆らうことなくごく自然に曲がりながらも、なおも天をめざし、そして次の生命を誕生させるために可憐な花を咲かせます。それが花の生命に与えられた役割であるからです。
では、人間の生命はどうでしょうか。やはり同じで、母親の胎内にいるときから、育とう、伸びようとしています。赤ちゃんを抱いて、そのつぶらな瞳をじっと見ていると、「よい子に育つんだよ」「立派な大人になろうね」と思わずささやきたくなります。それは、これから〝人間を始めよう〟としている新しい生命が持つ、純粋な使命のようなものを感じるからではないでしょうか。
人は誰でも、かつて自分が赤ちゃんだった頃、周りの大人から、同じような言葉をささやきかけられていたのです。その赤ちゃんが大人になった今、つまり、今の私たちは、花の生命のように、自然のままに、当然のごとく、まっすぐに天を向いているでしょうか。
この地球上のすべての生命の中で、最も進化した生命体であり、唯一、知性を授けられた人間だけが、ときとして自分をゆがめながら育っていくことになります。そして生き方に悩み、迷っているのです。これは不自然なことです。
そして実は、そうなる要因のひとつが、自らの持つ「習慣」にあるのです。
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